「スランだ!殺せ!」「追いかけてくるのは死!待ちうけるのは恐怖!
森脇森脇おんなのこ物語おんなのこ物語と言っていたら、心ある友人が誕生日プレゼントとして森脇真末味の『緑茶夢―スラン―』、そしてA・E・ヴァン・ヴォクト(ヴォート?)の『スラン』のセットを贈ってくれました。
『緑茶夢』の方もなかなか面白かったのですが、『スラン』の方を夢中になって読み終わった頃には、やがて自分にも触毛が生えてきて、純スランにならないともいえない、などという、読まれたらたまらない思念がむくむくと湧いてきました。
この『スラン』、『おんなのこ物語』で水野が八角に、
水野「これ読んでみろ」(本を差し出して)
八角「……スラン?」
水野「おれのバンドの名だ」「昨日決めたバンド名さ すこしずつ形になってきたよ おこるかい?」
八角「いいや水野の自由だから……」「だけどこれ”ステッカー”と名前がにてるね」
水野「ばかいえ 意味が全然ちがうだろ これはな」
仲尾「なんの話しだい?」
水野「い いや……本の話」
仲尾「どんな?」
水野「どんなって」「あ!おれバイトだったんだ」「じゃな八角」「さいなら仲尾さん」
という場面で出てくるのですが(笑)、読んでみたら、ハッハーン!という感じで、とにかく面白いのなんのってもう!
森脇さんは後にSF作品も描かれているだけあって(未読)、自分の漫画に登場するバンド名をここから採るなんて、素敵じゃないか?
この『スラン』(1940)、SF方面に滅法暗い私はこれまで全くノーチェックだったのですが、ミュータントもののはしりというか、超古典的名作だそうで、たしかにジェットコースターのような話の展開にありとあらゆるSF的要素がこれでもかというくらいに詰まった傑作でした。純スラン・無触毛スラン・人間、という三つの種族の、互いに相手を絶滅させようとするような絶望的な対立と、超人的な(純スランだから!)能力と意志でなんとか対立を終わらせようとする主人公、という設定も、時代背景を考えると非常に切実なものだったような気がします。
特に読んでいて面白かったのは「読心」の描写で、まあ実際自分がこんなことをされたらひとたまりもないというか、碌なことを考えていないのでまさに悶絶死ものですが、人が読心されているのは面白かった(笑)。
で、登場人物同士の出会いがこんなに劇的な作品もそうそうないんじゃないかと思いましたが、ジョミーとキャスリーンが車の中で二人まどろんでいる場面など、なんかすごいラブシーンだと思いました。
ここをたまたま読んで下さった方の中にはまだこの作品を未読の方もいると思うので詳しくは書きませんが、え、そんなのアリですか!?というその後の急展開には、しばし自分の脳を撃たれたような衝撃が(笑)。と笑っていますが、そこを読んだときには本気で泣きたくなりました(笑)。
そろそろ『ブルームーン』を読みたいところですが、なかなか手に入りづらいようなので、ハヤカワ文庫の『天使の顔写真』『アンダー』あたりから読んでみようかと思います。
おんなのこ物語(ストーリー) (1) (ハヤカワコミック文庫 (JA835))
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